コーヒーを楽しく美味しく

私のコーヒーは、もしかすると私だけのコーヒー

心とからだのオアシス、コーヒー。
コーヒーを楽しく美味しく飲むために、
美味しいいれ方・ブレンドの秘法・焙煎のコツを自分なりに見出した。
あなたの求めるものではないかもしれないが、全てを公開しよう。


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2001.4.13 撮影                   2001.6.6 撮影

写真は、前橋ばら園の温室にあったコーヒーの木。実を採取することを考えていなったので、
高さが3メートルを超えていた。約2ヶ月で、こんなにも色が違う。




 

 美味しいコーヒーをいれる

 私がはじめてコーヒーに出会ったのは戦後間もない頃のこと、造り酒屋だった我が家に酒と交換に進駐軍の二世兵士が持ち込んだ缶詰のレギュラーコーヒーだった。母はこれをガーゼの袋に入れて、やかんで煮出して子供たちに飲ませてくれた。当時小学生だった私には、生まれて初めて味わう美味だった。

 高校時代、当時ぼつぼつとできはじめた喫茶店は、蛮カラな学生たちには禁断の場所だったのでしばらく離れていたが、大学時代には、コーヒーが生活の一部になっていた。三鷹の奥から新宿のデパートに出かけては、香り高い、味わい深いコーヒーを買ってきて楽しむようになった。親のすねをかじりながらの贅沢だった。

 卒業後は酒造りに携わりながら、最高の味と香りを求めて、コーヒーにのめり込んでいった。その長年の試行錯誤から得たものの中から、ペーパードリッパを使った、誰にでもできる美味しいコーヒーのいれ方を公開しよう。嗜好品の世界は、人それぞれの好みがあるので、私だけの美味かもしれないが。

 この先の写真をクリックすると、左上に600×450ピクセルで表示する。2つほど古い写真を使ったために拡大しないものがあるが。左フレームの一番下をクリックすると写真が閉じる。ボタンボックスには、10年間の質問への答えの主なものをサブウィンドウに掲載した。必要とあったら読んでいただきたい。サブウィンドウ以外をクリックすると閉じる。

  
 

 豆を選ぶ

 まずコーヒーは、生鮮食品だと理解しよう。生の豆、焙煎した豆、粉に挽いたコーヒー、抽出した液体の全てが、生鮮食品だ。したがって鮮度の高い豆を選ぶことが第一である。焙煎してから1ヶ月以上経過したものは避けたい。豆ではなく、粉に挽いてあるものは避けること。産地や銘柄が曖昧な表記のものは避けること。できれば窒素ガス充填とか、真空パックという、酸化防止の対策の施されたもので、焙煎された日付の表示されたものが望ましい。

 好みの深さに焙煎された豆を選ぶこと。焙煎の程度が表示されていない商品は避けたいが、豆の様子が外から見えるパッケージの場合には、豆の色と艶で選ぶことができる。明るい茶色ならミディアム・ロースト、栗色ならハイ・ロースト、艶のある栗色ならシティー・ロースト、焦げ茶色で部分的に油がにじんでいればフルシティー・ロースト、暗褐色で全体的に油でコーティグしたようになっていたらフレンチ・ローストだ。特に好みがなければ、シティー・ローストかフルシティー・ローストのものを選ぶと失敗がない。ただしこの見分け方は、一般的な分類とやや異なる。

 産地などの表示がある場合は、好みの産地のものを選ぶこと。最終的にはその商品の焙煎業者が信頼できるかどうかにかかっている。もし「○○ブレンド」とあって、その会社が信頼できるなら、買ってもよい。これからの時代は、その会社が自信を持ってブレンドした商品がコーヒーの主流となっていくだろう。その商品の味や香り、焙煎の程度についての説明を読んで、好みに合致するかどうか判断する。ただし例えば「キリマンジャロ・ブレンド」とある場合、キリマンジャロに別の産地の豆をブレンドしたのか、それとも別の産地の豆にキリマンジャロをブレンドしたのかをうたっていない場合は避ける。参考までに「キリマンジャロ」という産地は存在しない。

 一回に購入する量は、一番少ないパックにすること。予想と異なったものであっても、万一好みと違っていても、損失を最小限にとどめることができる。

 

 豆を保存する

 焙煎したコーヒーの香味の劣化の原因はいくつかあるが、最大の原因は、紫外線と温度変化を別にすれば、空気との接触による酸化と吸湿である。これらを少しでも少なくするために、購入したコーヒー豆は、一回分ずつ小分けにして、冷凍保存するのが一番の方法だ。小分けの小袋には、商品名・購入年月日などを記載して、さらに酸素を通さないプラスチックのラップで包んでおくのが望ましい。キャニスターに保存しても、空いた部分には空気があるため、どうしても酸化する。焙煎後3週間もすると、鮮度が落ちるが、冷凍保存すれば、数ヶ月は鮮度を保つ。鮮度が落ちると、香味そのものが落ちる上に、ドリップの際のドームが壊れ易く、抽出が思うようにいかない。



 

 道具を選ぶ

 ここではペーパードリッパーを使う方法に限定して、美味しいコーヒーのいれ方を探ろう。ペーパードリッパーには、メリタ(一つ穴)、カリタ(三つ穴)、コーノ式(円錐形、写真参照)などの種類がある。手持ちのものがメリタやカリタであれば、改めて購入しなくてもよいが、新たに購入するなら、東京珈琲サイフォンまたはハリオの円錐型ドリッパーを選ぼう。器具によりお湯の注ぎ方に多少の違いがあるので、手持ちの器具に合わせた使い方をする。

 ドリッパーをのせるグラスポットは、ドリッパーがしっかり収まる口径のものを選ぶこと。ハリオにはハリオが、メリタやカリタにはそれぞれのブランドのものが安定していて使いよいが、ぐらつかないならブランドにはこだわらない。

 湯を注ぐドリップポットは、実は大変重要だ。やかんや電気ポットから直接注ぐのでは、旨いコーヒーはいれられないからだ。ホームセンターなどで、口が細くて長い、ステンレス製の1リットル前後のドリップポットが比較的安価に入手できるので、ぜひ投資して欲しい。手持ちのものの口が太めならば、アルミフォイルで口を細く作って、取りあえず間に合わせてもよい。

 もう一つ、温度計という大切な道具がある。私はダイソーで525円で購入したデジタル温度計を永く使っていたが、誤差が2度ほどあるので、昨年末にもう少し正確なものに替えた。ただ表示が遅いのが難点だ。

 コーヒーの豆を粉に挽くコーヒーミルという道具も必要だ。小型のミキサーのように、刃の回転するコーヒーミルが比較的安価に売られているが、手回しミルはこれよりも高価だ。経済性だけではなく、どの程度使うかによっても道具の選定は異なってくる。

 

 豆を挽く

 豆を挽くにはコーヒーミルが必要になる。2枚の刃が回って粉にするものや、カリタやメリタから売り出されている家庭用の機械ミルもある。価格との相談だが、できれば100グラムまで挽ける、メッシュの調整のできる電動式がお薦めだ。手回しミルが一番香りがいいと言うプロもいるが、回転がムラになり易いし、挽きながら香りを飛ばしてしまうことになる。小分けして冷凍しておいたものを即ミルで挽くと、なにしろ凍っているので、摩擦熱の影響が最小限で済む。

 豆の挽き加減は、コーヒーミルなら指定どおりの中挽に、回転する刃でカットする式のものは、手に持って角度を調整しながら、できるだけ均一になるようにする。一般に細挽きは苦味や雑味を引き出し、粗挽きは酸味を引き出す。ペーパードリップの場合、中挽きが標準だが、深煎りはやや粗めに、浅煎りはやや細かめに調整するとよい。ここでの説明と逆だが、メリタが日本で発売されたころは、フレンチ・ローストの豆をかなり細引きにしたものをメリタ・ブレンドとして販売し、少量のコーヒー粉でいれることを推奨していた。結局は好みだ。

 ミルはできればその都度かすを取り除く。溝や刃にこびりついたかすが酸化すると、次に抽出するコーヒーに嫌な匂いと雑味をもたらす。その日の内に何度も豆を挽く場合は、最後に挽いた後で清掃する癖を付けるとよい。小型のミキサーのようなミルの刃は、ティッシュペーパーを入れて回転させると奇麗になる。

 

 粉をセットする

 標準的には、1杯を150ミリリットルとし、粉10グラムを用いることとされている。これはかつて浅煎りのコーヒーをアメリカンとして珍重した時代の名残で、スターバックスなどのようにフルシティー・ローストからフレンチ・ローストが主流になった今日では濃すぎて、もう一杯飲みたいというような味わいではなくなる。ミディアム・ローストが好みなら、これまでの基準でもよいが、中深煎りから深煎りの豆を好むなら、150ミリリットルについて6〜8グラムが飲み易い。

 ドリッパーにフィルターペーパーをセットし、空のフィルターペーパーにドリップポットからお湯を注いでろ紙を洗い、軽く水気を切ってサーバーの湯を捨てる。器具を洗いながら同時に暖めるためで、陶器製のドリッパーの場合は、絶対に欠かしてはならない。続いて、ミルで所定の量の豆を挽いてペーパーに入れる。焙煎してからあまり日柄の経っていないコーヒーの場合は、スプーンなどで粉の表面を幾分真ん中がへこむようなクレーター状にし、ある程度日数の経過したものは平らにする。保存方法により日数の基準は異なる。どちらの場合でも、粉を押しつけないように気をつける。

 

 水と湯温を選ぶ

 水は軟水がよい。普通は、水道水をそのままで十分だが、マンションなどで一旦貯水したものを使う場合は、浄水器を通してから使う。ただしカルシュームを加えたり、アルカリイオン水にするものは避ける。コーヒーの持ち味の酸味を中和して、味のバランスを壊すからだ。環境によってミネラルウォーターを使わなければならない場合は、軟水のものを選ぶ。

 水から沸かした「新鮮なお湯」でなければならないという記述を本などで見かける。紅茶の場合は、水から湧かして沸騰直前の92℃ぐらいにならないとジャンピングが起こらないが、コーヒーには、完全に沸騰したものを冷まして使う。従って、電気保温ポットのお湯でも全く差し支えない。むしろ溶け込んでいた酸素や塩素化合物が抜けている分、かえって望ましい。

 中深煎りのコーヒー粉をペーパードリップで抽出する場合、ドリップポット内の湯温、つまり注ぎ口から出る湯の温度を83℃に調整する。±2℃の誤差はさほど問題がない。普段使う電気保温ポットややかんで十分に沸騰した熱湯を、一旦グラスポットやカップに受けて、それからドリップポットに移した場合、何℃に成るか知っておいて、常に83℃の湯が得られるように慣れておく。

 湯温が90℃に近づくと、苦みと雑味が強くなり、相対的に酸味が弱く感じるようなる。93度以上では、粉に残しておきたい諸々の成分が溶け出すため、雑味の中に苦みばかりの、汚いコーヒーになりやすい。苦みの際立ったコーヒーが好みなら、あるいはどうしても酸味を和らげたい場合は、1段階細挽きにして、88〜90℃で落とすとよい。

 湯温が80℃を下ると、酸味が強調され、雑味も少なく、苦みが弱くなる。従ってさわやかなすっきりタイプが好みなら、80℃かやや下回る湯温で、豆の量をやや多めにして、1段階粗めに挽いたものを使うとよい。ただしあまり湯温が低くなると、バランスが崩れるので要注意だ。

 

 湯を注ぐ

 注ぐ時点で83℃前後に冷ました湯を、フィルターのコーヒーの中央部分から「の」の字を描くように静かに注ぐ。サーバーに10〜20ccほど落ちたところで注ぐのを止めると、お湯を受けたコーヒーが次第に膨張して、粉の表面が膨らみ、焙煎からあまり日数を経過していない場合は、右の写真のように盛り上がってる。この状態で30〜40秒待って熟成させるとともに、その間に勇気を振るって、最初に溜まった液体(粗走り「アラバシリ」という)を捨てる。この粗走りのコーヒーは不透明で雑味成分が多く、これを捨てる勇気の無い人は、美味しいコーヒーに中々たどり着けない。この粗走りを別のカップに受けておいて、後から抽出したものと飲み比べると、なるほどと納得がいく。

 円錐型のドリッパーと穴が3つあるカリタ式とメリタとでは、熟成後のお湯の差し方に違いがある。メリタのドリッパーの場合は、のの字を描きながら、途切れること無く、切らさずに静かに注ぐ。円錐型とカリタ式の場合は、同じようにのの字を描きながら一杯に注いで止め、クレーター状に沈むまで待ってから再び注ぐことを繰り返す。沈み切る少し手前だ。いずれの場合でも、規定量に達したら、まだ出るからもったいないと思っても、再び勇気を振るってドリッパをサーバーから外し、残りの抽出液を捨てる。抽出の最初と最後は雑味が多いからだ。サーバーからカップに注ぐときは、泡立てないように静かに注ぐ。円柱形のマグカップでは、どうしても泡立ち易い。

 なお円錐形のドリッパーでは、メリタ式と同じように、切らさず静かに注いでもよく、個人的にはこの方法でいれている。ネルドリップでは別けていれるので、そのやり方を踏襲したものだが、粉とろ紙の外に空間というクッションが無いため、別けていれると粉の層が壊れ易い。別けていれるのがよいか、別けないほうがいいか、最後はいれ手の判断にまかされる。

 

 微妙な調整をする

 以上で美味しいコーヒーがいれられたはずだが、もし好みと違っていたら、色々な条件を考えて、再度挑戦してみよう。プロは同じ豆からはいつも同じ味を提供しなければならないが、私たちアマチュアは、同じ豆から色々なバリエーションを楽しめる。

 浅煎りの豆は、苦みよりも酸味が感じられ、深煎りの豆では逆に苦みが強調される。酸味対苦みのバランスを<酸味:苦み>で表せば、焙煎度では<浅煎り:深煎り>に、挽き方のメッシュでは<粗挽き:細引き>、ドリップポットの湯温では<低温:高温>、ドリップポットから注ぐ湯の速さでは<高速:低速>となる。中深煎りのシティー・ローストの豆を、中挽きにして、83℃の湯温で、普通に注いで得られたコーヒーが、もし酸味が強く感じられるので、苦みを強調したい場合は、少し細かく挽き、湯温を90℃を超えない程度に高くし、注ぐ速さをゆっくりにすれば、苦みが酸味を押さえる。逆に苦みが勝っていて、もっと酸味が欲しい場合は、粗めに挽いて、湯温75〜80℃で、注ぐ速さを早めにすれば、苦みが弱まって、酸味が感じられる。ただしこういう調整は相対的なもので、常に期待どおりの結果が得られるとは限らない。あくまでも生豆の特徴を活かした焙煎が、最後まで優先する。それぞれの生豆の持ち味に応じた、自家焙煎という新しい楽しみに開眼して欲しい。

 ついでながらプロとアマの違いを確認しておこう。プロはコストを重視しつつ、対価を払ってくれる客に、いつもと変わらぬ味を提供しなければならないから、冒険はできない。一方アマチュアは、ある程度コストを無視しても、常に最上のものを創出しようとする。失敗はさらなる飛躍へのステップストーンとして許される。常にではないにせよ、アマチュアがプロを超えられるのは当然のことだ。アマチュアこそ、最高の味覚を創出することができるのだ。客がそのコーヒーを「美味しい」と言ってくれたら、それまでの苦労は飛んでいってしまう。

 

 その他のいれ方

 コーヒーをいれる道具は色々あるが、パーコレーターやサイフォンといった高温で抽出するものは避けるべきだ。高温でいれると、木香、つまりコルク臭のような木の匂いがするうえ、粉に残しておきたい雑味成分が溶け込む。パーコレーターは一旦抽出された液体が、繰り返し沸騰してさらに抽出するため、ひどい味になる。右の写真のようなフレンチプレス(コーヒープレス)などの澱の多い道具も避けるべきだ。金網で濾過する式のものは、どうしても澱が多くなる。ただしフレンチプレスで抽出した液を、ペーパーフィルターを通して澱を除去すれば、ペーパーフィルターでは出せない深みのある味と香りを楽しめる。結局道具は、使い方次第だ。

 コーヒー豆をミルで粉にすると、どうしても微粉が出る。これが液体に入ると澱になって、渋みなどの雑味の原因になる。どんな抽出法でも澱は出る。私が数十年来使っている旧アートコーヒーのコーヒーシェーカー(写真右、長い間にキャップが失われた)が、最上の味と香りを抽出できるにもかかわらず、一般化しなかった理由は、この澱の処理をユーザー任せにし、捨てるよう指導しなかったのが原因だ。ろ紙を透して最初に得られた液体には、澱がたっぷり含まれ、その後はコーヒーの粉の層が澱を閉じ込める。最初に澱が多いことは、程度こそ違えペーパーフィルターの場合も同じである。澱を積極的に捨てない場合は、澱をポットに残すか、カップの底に残すかしなければならないので面倒だ。なおコーヒーシェーカーのろ紙は、既に終売しているが、東京珈琲サイフォンやハリオのろ紙で代用できる。シェーカーのサイズに中と小があるので、自分のに合ったサイズを購入すれば、眠っているシェーカーがよみがえる。





 

 簡単な焙煎の仕方

 実際にやってみれば分かるが、焙煎は思いのほか簡単だ。誰にでもできることだが、なぜか一大イベントのように考えられているらしく、コーヒーは自分で焙煎するよと言うと、特別な目で見られる。簡単な焙煎をすることで理解が深まり、一層の美味を楽しむことができるので、ぜひ試みて欲しい。

 コーヒーの味は、7割がた生のコーヒー豆の品質によって決まる。残り2割が焙煎により、1割が抽出による。だから品質の優れた生の豆を選ぶことが重要だ。生のコーヒー豆は生豆と書いて、プロたちはナママメと呼ぶそうだが、私はキマメと呼んでいる。好きな産地や銘柄の生豆を焙煎するのは慣れてからにして、練習にブラジル・サントスNo.2を100グラム使って、フレンチ・ローストに焙煎してみよう。煎り上がると、水分が蒸発して目方は20パーセントほど減少する。



 

 ハンドピックする

 コーヒーの生豆は農産物だ。だから出来の良いものに、不出来なものや石や木片などが混じっている。これらを丁寧に手で取り除くことをハンドピックと言う。少しでも欠点豆が残ると味や香りを著しく損ない、石などがあると、ミルの刃をいためる。ここではとりあえず焙煎量の1回分をハンドピックで選別することにしよう。

 観察力を養ってからでないと、ハンドピックの説明は難しい。どんな豆を残してどういう豆を取り除いたらいいか、実はひと言では言えないからだ。それでもひと言で済ませてしまうと、異物はもとより、平均的な豆以外は取り除くことである。光沢のない暗い色のトレーなどに豆を広げると、ほとんどの豆は同じ色、つや、形をしている。それを標準として、色やつやが変わったのもの、形の変なものは怪しいと考え、取り除いて別に保存しておこう。観察眼が肥えてから、もう一度チェックしたらいい。ブラジル・サントスNo.2は、サントス港から船積みされたブラジル産のコーヒーで、欠点豆が非常に少ない。(300グラム中4点以下)そのうえ中煎りから深煎りまで適し、焙煎もし易い。なおNo.2が最上級品で、No.1は存在しない。なお左上のサムネールから開く欠点豆の写真は、写真の中をクリックすると拡大する。

 豆を選ぶ際にも、コーヒーが農産物だということを再認識しておこう。古米よりも新米がおいしいように、コーヒーも収穫から歳月を経ていないもののほうが質が高い。収穫後おおむね1年未満の豆をニュークロップと呼ぶ。しかしなぜか世間では、それよりも古いオールドクロップのほうが良質だと誤解しているようだ。ニュークロップはオールドクロップに比べ一層丁寧な焙煎が必要なので、そういった誤解が生まれたのだろう。コーヒー関連のウェブサイトを見ると、なぜか誤解や迷信じみた記述が多いが、惑わされずに判断して欲しい。

 

 道具を揃える

 必要な道具は、家庭のガスレンジまたは卓上カセットコンロ、銀杏を煎る手網(右の写真は拡大しない)、手網の蓋を固定するクリップ、クッキングタイマーまたは時計、煎り上がった豆を広げる網または笊、冷風を吹き付けるためのドライヤー、軍手、メモ帳である。生豆を煎っていくとチャフという豆の薄皮がコンロの回りに飛び散って、後片付けが面倒になるので、作業はカセットコンロで屋外で行うのが望ましい。ただ屋外では、僅かな風でも炎の調子が狂うので、ガスレンジ用のアルミのレンジガードなどで囲う必要がある。

 女性や腕力に自信のない男性は、太いゴムなどで上から手網を吊るすようにするとよい。コンロの回りに支柱を据えるか、立ち木の枝を利用するかして、環境に応じた工夫で、快適に作業を進めることができる。さらに焙煎を容易にするには、後で述べる焙煎工房が大変具合が良い。

 アルミのレンジガード、手網につけるヒートン、太い輪ゴム、軍手、キッチンタイマー、メモ帳などは、ダイソーなどで入手できる。以前使っていたデジタルの台所用温度計もダイソーで買ったものだ。手網は金物店かホームセンターで入手できるが、近くにそういう店が無ければ、ネットでも探せる。

 

 生豆を煎る

 手網に生豆を入れてクリップで蓋を留め、コンロに火をつける。タイマーをオンにするか、時刻をチェックしよう。網を火口の上10センチ±2センチの高さに保って手網を振る。手網は、偏らないように水平に、左右にやや長い楕円を描くように振る。1分に100〜120振りするぐらいがよい。

 家庭用のコンロなら、火力が5段階の場合は3に、アナログの場合は中間に設定するが、カセットコンロでは、中間の火力が曖昧だ。そこで全開にしてから、炎の状態から中間点の見当をつけ、それよりやや強めのところにダイヤルがいくように印を付けておく。焙煎の出来を決めるのは、生豆の質、火力、火からの距離、ムラのない手振り、所要時間が大きい。火力と火からの距離は、できるだけ一定にしておいて、所要時間を調整するのがよい。

 カセットコンロはプロパンガスを液化したものを充填してある。使うに従って気化し気化熱が奪われ、冬場はガスの圧力が下がってくる。そんなときは、40〜50℃の温水にしばらく浸けると圧力が回復する。ただ焙煎の途中で暖めることはできないので、二度煎りの際に行なう。ガストーチなどで暖めるのは極めて危険なので、決してやってはならない。

 巧くできた焙煎を再現できるように、また失敗の原因を突き止められるように、以下のようなことをメモしよう。焙煎開始からの経過時間、色の変化、ハゼという音の様子と始まりと終わりの時刻、ハゼには1ハゼと2ハゼがあるので、メモに記録すること。それぞれの時点での音の他、生豆の色の変化、匂いの変化、煙の量などに加えて、抽出前後の味や香りの詳細、反省・改善点、その他気づいたことをメモしておく。やむを得ず火力や火からの距離を変更した場合は、その時刻と、結果についても記録する必要がある。

 

 ハゼを目印にする

 焙煎の進み具合をチェックするには、豆の色の変化、煙の具合、匂いに気を配るとともに、何よりも豆がはぜる音に注意を集中する。条件によって大きく異なるが、煎りはじめて7〜12分ほどすると、パチパチと、やや高くて大きな音で豆がはぜる。最初のハゼを1ハゼと言い、しばらく続いた後治まる。火力が強すぎると1ハゼが短時間で終わり、煎りむらの原因となる。1ハゼが治まったところが、ミディアム・ローストである。ミディアム・ローストで美味しく飲める豆は案外少ない。ある自家焙煎ショップの若い店員が、ミディアム・ローストが標準だと言っていたが、その考えは古い。個人的には、ミディアム・ローストは浅煎りに分類すべきだと考えている。

 1ハゼが治まってしばらくすると、全体的に豆の色がやや濃くなって、豆の表面が滑らかになってくる。この段階がハイ・ローストだ。ハイ・ローストの後に来るシティー・ローストと合わせて中深煎りと呼ぶが、私はこの2つのローストを中煎りと考えている。分類の仕方にこだわるよりも、自分の味を追求すべきだが、世間の呼称との食い違いを心得ていないと、誤解を与えたり、好みに合わない買い物をすることがある。慣れてからのことだが、基本をシティー・ローストにおいて、豆の特質によって、それよリ浅煎りのハイ・ローストか、やや深煎りのフルシティー・ローストにすると、まず間違いが無い。

 1ハゼが終わってしばらく煎り進めていると、1ハゼよりも低くて小さな音の2ハゼが始まる。2ハゼの直前がシティー・ローストと言われるが、2ハゼが起こってみなければ、直前であるかどうか分からない。そこで私は、2ハゼが始まったところをシティー・ローストとしている。色は艶のある濃い栗色である。左の写真はシティー・ローストのエルサルバドル・パカマラ・サンタテレサ(いわゆるパカマラ温泉コーヒー)を冷却しているところ。

 2ハゼが始まると、煎りの程度が急速に進む。火力が強い場合は、特に著しいので、油断しないようにしよう。再びややこしいことだが、2ハゼの最高潮時がフルシティー・ローストである。最高潮の瞬間は、ある程度カンで外見から判断することになる。

 またまた時間軸のいたずらだが、2ハゼの終わる直前がフレンチ・ローストとされる。シティー・ローストのときと同様、私は2ハゼの終わったところでフレンチ・ローストとしている。ここで重要なことは、フルシティー・ローストでは豆の一部に油が浮かんでくること、フレンチ・ローストでは、豆全体に油が出てくることが判定の鍵になる。

 慣れるまでの最初の数回は、フレンチ・ローストを目標にするのがよい。途中の各段階の煎り具合を体で感じることで、次はどうなるを予測できるようになるし、手の振り方や火力の調節にも慣れてくる。くどいが、火力と網の高さは一定に保つようにし、特に必要な場合にのみ、網を上下させて、熱量を調整するようにしよう。

 煎り上がった豆を網に広げ、ドライヤーの冷風で急冷する。多少の温もりが残っていても構わないが、冷えたところでもう一度ハンドピックする。目立って色の薄いものを取り除いた後、紙袋などに入れて1日ほど経過してから密閉容器に保存する。煎りたての豆は、なぜか香味が落ち着かないが、半日以上経過すると落ち着く。冷凍保存はこの段階でするのがよい。

 

 焙煎の度合い

 一般に行なわれている焙煎の程度の呼び方は、浅煎りにライト・ローストとシナモン・ローストが、中煎りにミディアム・ローストとハイ・ローストが、中深煎りにシティー・ローストとフルシティー・ローストが、深煎りにフレンチ・ローストとイタリアン・ローストが分類されている。がしかし実際問題として、浅煎りの豆からいれたコーヒーは、不味い。飲用に堪えないものを分類するのは、この段階の豆でカップテストという利きコーヒーをするためだ。またイタリアン・ローストは、エスプレッソやアイスコーヒー用とも言われるが、フルシティー・ローストかフレンチ・ローストの豆を使うほうが旨く、ミルクを入れなくても飲める。こう考えると、ミディアム・ローストからフレンチ・ローストまでが、私たちの守備範囲だ。

 それなら各段階の具体的な違いはと言うと、これが案外曖昧だ。『ハゼを目印にする』ところで述べたように、豆の表面の色と艶で判定するのが明快でいい。もし販売するとなれば、世間一般の分類に従うことになるが、アマチュアである限りこれでいいのだ。





 

 ブレンドする

 コーヒーの一番の醍醐味は、ブレンドにある。自家焙煎で培った産地や銘柄ごとの確かな味覚データーが花咲く時だ。自家焙煎したコーヒーそのものが、既にユニークなものだが、ブレンドは新たな創作である。時には芸術と言ってよい。焙煎までは手が回らないという人も、ブレンドにはチャレンジできる。自分だけの味の世界をかいま見てから、焙煎に挑戦するのも行き方だ。

 

 ブレンドの基本

 ブレンドとは、持ち味の異なった2〜3種の豆を和音のように組み合わせることで、新しい香味の世界を開くことを言う。従って、同じ傾向の豆同士をブレンドしても意味がない。また基本的に同じ焙煎度のものを混ぜるよう指導されている。しかし考えてみたまえ、それぞれの豆に最も適した焙煎を施した3種の豆があるとすると、焙煎の程度は少しずつ異なり、決して同じではない。プロは同じ焙煎度のものをブレンドすると教えているが、アマチュアはもっと自由な発想で冒険すべきだ。ちなみにブラジル・サントスNo.2をハイ・ローストかシティーロストにしたものとフレンチ・ローストにしたものを4:1ぐらいの比率でブレンドしてみたまえ。ブラジル・サントスのフラットだが爽やかな味わいに奥行きのあるコクが加わったのが感じられよう。自由な発想で試みたブレンドが、新しい味覚の世界を創り出した感動と喜びは、自分で焙煎して初めて享受できるのだ。



 

 ブレンドの実際

 ブレンドに使う豆は、2〜3種がよい。基本は複数の豆を同じ割合で合わせて試飲し、必要とあれば、強調したい味の豆を増やしてみる。私の好むブレンドは、シティー・ローストのブラジル:フルシティー・ローストのコロンビア:シティー・ローストのタンザニアを2:1:1で合わせたものと、フルシティー・ローストのコロンビア:シティー・ローストのコスタリカを1:1で合わせたもの。前者をBCTブレンド、後者をココブレンドと呼んでいる。BCTブレンドのタンザニアをグァテマラに替えれば、BCGブレンドということになる。この場合、同じ割合にしている。

 一口にブラジルと言っても、国土の広さでは日本の22.5倍である。ブラジル産のコーヒーには、日本産の米以上の産地と品種の違いがある。ブラジル・サントスとは、サントス港から積み出されたというだけで、具体的な産地や品種は分からない。No.2というのは、ブラジルでは最高品質とされるが、欠点豆や異物が最も少ないということ以外は分からない。産出国ごとにSHG (Strictly High Grown)、SHB (Strictly Hard Beans) などのランク付けや、AA など豆のサイズによる分類はあるが、それ以外のことは不明という事情は全ての産地について言える。だから産地の表示は、大雑把な目印と考え、自分の味覚で確認して、それをデータとして保存活用するのが最善である。

 大雑把な産地ではなく、ちょうどブランド米と同じように、具体的な地名、個々の農園名、品種名など、細かに表示された生豆もある。そういうスペシャルティー・コーヒーについては、ここでは触れないので、ネットなどで自分で調べ、自分の味覚データを信じて活用して欲しい。

 このページの最初に「キリマンジャロ・ブレンド」というインチキ名称について述べたが、品質に自信のある自家焙煎業者が、誇りを持って自分のブレンドにそういう名前をつけたものなら、インチキではない。むしろそのブレンドは、飲むに値するだろう。ただどうせ名前を付けるなら、そのブレンドの特質を表すほうがいい。名は体を表すと言うではないか。



 

 マニアックな焙煎

 『簡単な焙煎の仕方』で述べた内容は、他のサイトや本にも出ている内容だろうが、これから述べることはユニークで、誰にでも薦められるものではないかもしれない。しかし参考になる点があるに違いないので、真剣に焙煎に取り組んでいる人や、スランプに陥っている人は、ぜひ読んで欲しい。

 

 豆を洗う

 前にも述べたように、コーヒー豆は農産物である。買ってきた農産物をそのまま煮たり食べたリすることがないように、コーヒー豆もそのまま焙煎して飲用に供すべきではない。豆の汚れはチャフとともに落ちてしまうと言う人もいるが、飲み比べてみれば、省いてはならない作業だと納得できる。ハンドピックした豆は、1回分ずつぬるま湯で水洗いしてから焙煎すべきだ。写真はブラジルをぬるま湯に浸けて掻き混ぜたところ。この後2度ほど水を替えて、水切りをする。ブラジルでは一般にナチュラル方式で精製されるので、水洗いを欠かしてはならない。

 水洗いの目的は、汚れを洗い流すことばかりではない。ハンドピックで取りこぼした空の豆は水に浮くので、これを取り除く。またコーヒーにとって一番大切なことだが、雑味を少なくして、切れ味をすっきりさせることも大きな効果だ。喉ごしの切れをよくすることは、つまり味の決め手である。切れ味の悪いコーヒーは、お替わりしたいとは思わないが、よいコーヒーは、もっと飲みたいと思う。

 水洗いは、豆の薄皮を傷つけないようにするやりかたと、薄皮まで洗い流してしまうやり方がある。洗った結果は同じようだが、焙煎中に出るチャフの量が極端に異なる。写真はブラジル豆を薄皮を残すように静かに洗って、風通しの良い日陰で乾燥させているところ。

 産地ごとの処理の方法や丁寧さによって異なるが、洗うとびっくりするほど水が汚れるものもある。その場合は、数回水を替えてからキッチンペーパーや清潔な布で水気を切って、笊などに広げて陰干しにする。天候にもよるが、2時間前後で乾くが、急ぐときは日向に干して、直ちに焙煎することもある。

 仕入れた生豆に嫌な匂いのすることがある。たぶん産地での処理やその後の保管に問題があって、発酵臭が付いたものだろう。この匂いを完全に消し去ることはできないが、薄皮まで洗い流し、焙煎の度合いを上げることで、かなり減らすことができる。問題の生豆をぬるま湯に1〜2分浸けてから、米を研ぐときのように、あるいはそれ以上にゴシゴシと洗うのだ。

 軽く洗うにせよしっかり洗うにせよ、干しながら再びハンドピックを行ない、次に述べる二度煎りで丁寧に焙煎する。水洗いすると豆の色がニュークロップのように緑色を帯びるが、欠点豆はほとんど変わらない。左の写真はタンザニアAAキボーを水洗いして干しているところ。中央の5粒が欠点豆で、下のものにはパーチメントが付いたままだ。周りのものと比べると、違いがはっきりする。特に注意すべきは右の写真のように緑色の点や筋のあるもの。水洗いしない場合は、うっかり見逃しがちだ。

 

 二度煎りをする

 揚げ物によっては二度揚げをすることで、さらに持ち味を引き出したり、味わいを豊かにするすることがある。コーヒーも同じで、二段階に煎ることで、乾燥を均一にして焙煎の精度を高め、味を整ることができる。一般に「ダブル焙煎」と言われる技法である。

 コロンビアなど、産地によっては生豆の乾燥度が均一でないことがある。そういう豆をこれまでどおりに焙煎したのでは煎り上がりにばらつきが出る。それを防ぐには、二度煎りが効果的だ。前の項で述べた方法で水洗いしたものは、乾燥ムラが生じ易いので、これも二度煎りする。

 煎りはじめて数分、1ハゼまでの所要時間の半分ほど経過したころで豆の色が白を経て黄色みを帯びてくる。水洗いした豆を含め、水分量の調整には、この段階で火を止め、豆を冷却する。煎り上がったものよりも気持ち冷めにくいので、十分に冷やす。写真は、水洗いしたタンザニアAAキボーが黄色みの帯びたところで火を止めたもの。

 産地によっては酸味が口に合わなかったり、刺すような酸味があって飲みにくいものがある。この酸味を和らげるにも二度煎りが効果的だ。この場合は、豆が黄色からもう少し進んだところで火を止めるのがよい。ただし1ハゼが起こってから止めると、本来の香りを損なうことがあるので注意すること。写真はコロンビア・スプレモが狐色になりかけたところで火を止めて、冷却しているところ。生豆の水分量のむらが大きいものは、この段階でも色にその傾向が残る。ついハンドピックしたくなるが、煎り上がりまで待つほうがよい。

 二度煎りは必ずしも万能ではない。必要の無い場合には施すことは無い。火を止めるタイミングも生豆の状態や目的によって異なってくる。ニュークロップという収穫後1年未満の豆には、新もの特有の豊かな香りがある。誤った二度煎りでこれを無くしたら、その焙煎は失敗だ。香りを重視する場合は、最初の煎りを押さえて、色が白みがかったところか黄色になりかけたところで火を止めると巧くいく。写真は、中国雲南省産の豆。この豆は煎り過ぎると苦みが強くなるので、酸味を損なわないように苦みを押さえて、最終的にハイ・ローストに煎り上げた。



 

 混合焙煎をする

 一般には薦められていないが、生豆の段階でブレンドしてから焙煎する方法もある。豆の大きさや含水量が一定していない豆を同じ網に入れて炒るのだから、二度煎りで最初に火を止める段階を工夫しよう。やや冒険をすることになるが、豆がきつね色か、もう少し進んだところで火を止めて、冷却する。

 生豆でブレンドして焙煎すると、ハイ・ロースト以下では、煎り上がりにばらつきが出ることがある。シティー・ローストからフレンチ・ローストに煎り上げるのに適し、アイスコーヒー用のブレンドにもよい。

 混合焙煎が一般に薦められていないのは、煎り上がりにばらつきが目立つためだろう。混合焙煎は二度煎りという手法と組み合わせて、丁寧に煎り上げれば、単品で焙煎してからブレンドしたものに遜色の無いものが得られる。ただし焙煎度の異なる豆のブレンドは、従来どおり個々に焙煎したものを使う。



 

 道具を作る

 常に希望どおりの焙煎ができるように、冷却装置や手網焙煎器を作り、戸外で多少の風の中でも、安定して使えるように工夫しよう。ここまで来れば、本当の意味でユニークと言える。

 

 冷却装置を作る

 コーヒーが煎り上がったときは200℃前後の高熱であるから、急いで冷まさなければならない。取りあえず簡単な冷却装置をと考えて作ったものが右の写真である。段ボール箱にエスロンパイプと百円ショップで買った裏漉しのふるいを取り付けただけのものだ。ふるいに煎り上がったコーヒーを入れ、電気掃除機を接続して冷却する。普通の吸引に設定して、1分ほどでOKだ。

 掃除機に接続する方法は、掃除機という大きなものを使うので、屋外で作業すには面倒だ。そこでホームセンターで980円で買った小型の扇風機を使って冷却装置を作ってみた。写真で分かるとおり、原理は全く同じ。裏ごしの網を大きくし、扇風機の風を下から外に出すためにもう一段橋桁のように重ねてある。大変使い勝手がよく、重宝している。

 手網から冷却装置に豆を移すには、一旦金属製のトレイで受けるとよい。盆がアルミ製の場合はハンマーで加工できるから、移し易いように口を作っておく。


 

 焙煎器を作る

 『簡単な焙煎の仕方』で述べた手網は、気軽に使えるうえ基本的で合理的な道具だ。自作派なら、ダイソーで買った17センチの網笊で、写真のような手網を作ってみるのもよい。セリアには柄付きの網が売っているので、蓋を付けるだけで完成だ。どちらでも50グラムぐらいは焙煎できる。なお蓋は0.5ミリ厚のアルミ板で作り、蓋に磁石を、柄にブリキ板を取り付けて、閉じたとき止まるようにしてある。

 本格的な手網焙煎器を作るには、多少のコストと自己責任が要る。なにしろカセットコンロを改造して、手網にバーナーを取り付けようというのだから。もし多少なり不安があるなら、市販の手回し焙煎器や、右の写真のような電熱器を使った小型ロースターを使ったらいい。

 まずカセットコンロの銅のパイプをボンベから数センチのところで切る。バーナーに銅パイプ以外のもので接続されているコンロは避ける。次いでコンロの裏に、本体部分と足にする部分に印を付けて、トタン板用の鋏で切り離す。同様に、ボンベを格納するコントロール部を切り離す。足にする部分は、できるだけ長くとり、手網に取り付けるための穴を開けておく。コンロの炎が直に手網に当たると、赤く焼けて煎りむらの原因になるから、それを防ぐために手網の底の外側に、17センチの網笊の網だけを1〜2センチ離して取り付けておく。手網の縁にコンロの足にした部分を針金で取り付け、コントロール部との間を模型の燃料パイプとして売られているシリコンゴムのチューブでつないだら、一応の完成だ。パイプを切るときに潰してしまったなら、千枚通しなどで穴を回復させ、ゴムチューブがはまり易いようにサンドペーパーなどで磨いておく。鉄板を切ったままではバリがあって危険だから、丁寧にヤスリをかけたり、テープを貼ったりして事故の無いように心がける。テープはキッチン用のアルミテープが使いよい。

 このままでも十分使い物になるが、熱を分散させないために網の回りにアルミのレンジガードを適当な高さになるように切って取り付ける。アルミ板の縁に針金を巻き込んでおくと、網への取り付けが容易になる。

 さらに高度の焙煎を目指すには、レンジガードを適当に切って、手網に蓋を付けるとよい。写真のものは0.5ミリ厚のアルミ板を使った。蓋の半分を開け閉めできるようにすることで、1ハゼまでの熱効果を高めたり、煙を味方にしたいショコラフレーバー系の豆に対処することも可能となる。網の蓋の内側とアルミの蓋の外側に磁石を取りつけて、軽い蓋がパカパカしないようにしてある。

 アルミの蓋は、営業用の焙煎器のダンパーに相当する。1ハゼまでは閉じて熱のこもりをよくし、ハゼの最中は開いて、煙を外に逃がすのがよい。1ハゼ後のショコラ系の香りの豆には、クリップと蓋の間に1センチほどの隙間を作って煎り進める。フレンチ・ローストを目標にする場合は、2ハゼの前辺りから同様にする。最初から最後まで蓋を閉じた状態で焙煎すると、豆によっては煙臭くなったり、味の切れが悪くなることがある。

 このような手網焙煎器を作る際には、カセットコンロの鉄板の厚さに注意が必要だ。鋏で切れない厚さのものでは、改造に当たってさらなる道具が必要になる。実はそういう意味では、作り損ねたものがある。どうせ失敗作だからと手網とバーナーとの間にセラミックの網を置いて、遠赤外線効果を狙った。深煎りには適しているが、先端が重いので、次に述べる焙煎工房(?)でないと、使いこなせない。

 以上のようにして作った手網焙煎器には、欠点もある。バーナーと網との距離が短く、距離を調整できない点だ。しかし網とバーナーの位置が固定されているために火力の無駄が少なく、火力調節が容易で、アルミの蓋の開閉によって熱を網の中に蓄えたり、煙を排出したりできるので、豆に合わせた焙煎が可能になる。次に述べる工房を作ることで、作業はさらに容易になる。

 この装置で焙煎するときは、火力を弱にして調子をみる必要がある。コンロの上で網を振るうときの火力で焙煎すると、バーナーに近いうえ、ガードがあるため、熱が逃げずに火力過多にる。

 

 焙煎工房を作る

 工房と呼ぶにはいささか貧弱だが、戸外でも風の影響をほとんど受けずに、かつ20分を超える作業でも腕が疲れないように作った、と言うよりも単に配置したのが写真の焙煎工房だ。別窓の写真は、写真の中をクリックするとさらに拡大する。

 不要になった衣類ケースの左に重石(9)を置いて安定させ、その上にガスボンベの入ったコントロール部(6)を、右にバーナー付きの手網(1)、つまり自作の手網焙煎器を置き、衣装ケースが撓まないように簡単な支柱(10)を立てる。焙煎器はケースの縁から太い輪ゴム(7)で吊って、腕の負担を軽減する。輪ゴムはケースの上に大きなクリップ(8)で固定する。最初はウッドデッキに腰掛けて作業をしたので、風向きによって、左右を入れ替えられるように、左にもクリップを用意した。その後駐車場に場所を変えたので、もっぱら写真の配置で使っている。

 手網の蓋を留めるクリップ(2)は、左右どちらでもよい。タイマー(4)、ライター(5)は使い易いところに置く。手網の下の鏡(3)は、手網を蓋で覆った際に炎の具合を確認するのに必要だ。手網や冷却装置の網(14)から豆を受けるには、スティールの盆(11)を使っているが、できればアルミ製の盆が望ましい。焙煎したものをハンドピックするためのピンセットとカップ(12)、保存する容器(13)も手近なほうがよい。保存容器に移す漏斗とチャフを払うはたきは、衣装ケースの後ろに置いてあるので見えない。

 使わないときは、右の写真のようにコンパクト(?)にまとめて、物置の隅に置いておく。椅子はともかく、重石は別にしてある。何せ胃の全摘手術後は、腹筋が弱っているので、なるべく重くしないようにしているからだが、健康な人は、一緒に入れておいても大丈夫だろう。



 

 誤解・迷信・ウソを切る

 色々なサイトでコーヒーについて語られているが、なぜか誤解・迷信・ウソが多い。どこの誰だか分からない場合はともかく、看護師や薬剤師という国家資格の肩書きのある人の発信したものは、たとえ誤った内容でも大きな影響力を持つ。ある友人は、コーヒーには必ず牛乳を入れるという。ウェブサイトでそうするよう教えているからだそうだ。

 

 結石が心配?

 飲用の対象であるコーヒーは、コーヒーの生豆を200℃前後の高温で焙煎したものをミルで挽き、これを熱湯で抽出したものである。先ずこの事実を大前提として、シュウ酸とカフェインの、いわゆる害に反論する。

 シュウ酸の科学的特性は、融点101〜102℃、最適昇華温度157℃で、減圧下では100℃以上で昇華することがある。詳しくは国立医薬品食品衛生研究所安全情報部のホームページをご覧いただきたい。農産物にはシュウ酸が含まれていることがしばしばだが、コーヒーの生豆には含まれていないと考えている。かりに含まれているとしても、昇華点を超える高温で焙煎した結果、残ってはいない。ガス化したシュウ酸は強い毒性があるから、手網で焙煎すれば、目や呼吸器に障害があるはずだ。ところが実際には刺激臭さえ感じない。つまり元々シュウ酸は含まれていないと考えられる。

 ヘルスネットメディアに「カルシウム流出、脳細胞増加も関与【 カフェイン最新研究 】」という1999年11月の記事がある。シュウ酸からではなく、カフェインからのアプローチだが、参考のために一段下げて引用しよう。

また昨年4月、コーヒーを飲むことで腎臓結石を防ぐことができるということも報じられている(Annals of Internal Medicine誌4月号)。これは、ボストンのBrigham and Women’s Hospital研究者グループが行った研究で、腎臓結石歴のない40歳から65歳までの女性8万千93人を対象に調べたところ、毎日コーヒーをグラス1杯分(8オンス)飲んだ場合、腎臓結石の生じる危険性が10%減少したという。一方、グループフルーツジュースの場合は反対に危険性が44%増加しており、研究者たちは「カフェインが尿の量を多くし、石の形成を難しくすることで危険性が低下していると考えられる」とみている。

 『漢方薬剤師 荒川充洋の健康みみブクロ』の『コーヒーを飲むと結石ができる?』には、「コーヒーは身体を酸性化する飲み物なので、毎日大量に飲むと危ないです。特に腎臓結石・尿道結石の既往歴の方は要注意です。」として、「節制していないと、わずか一年で結石ができてしまいます。」と結んでいる。本当にコーヒーが原因で結石ができるのだろうか?1年後に再び結石ができた人は、コーヒーは飲んだが、シュウ酸を含む食品は何も摂っていなかったと証明できるのだろうか?それよりも何よりも、コーヒーにシュウ酸が含まれていると実証できるのだろうか?漢方薬剤師という肩書きでのブログだから、影響も大きいい。コーヒーが体を酸性にするという根拠は何のか、腎臓結石・尿道結石とコーヒーの因果関係の証明を、筆者は一切していない。ブログなどで虚偽の発言で徒に不安をあおるのは、職業倫理にもとる行為だ。

 『コーヒーダイエットはコーヒーの飲みすぎに注意!(青田典子さんの食生活)3/30恐怖の食卓放送より』には、「このままコーヒーを大量に飲み続けると・・・10年後」として、逆流性食堂炎、脂漏性湿疹、老人性脂腺増殖症、サンゴ状結石、月経前症候群、早期閉経、病的口臭、切れ痔になると警告している。結石の項を一段下げて引用しよう。

コーヒーはシュウ酸を多く含む
少量のシュウ酸は腎臓を通り尿で排出されるが
大量のシュウ酸を摂ると腎臓に溜まりだす
シュウ酸はカルシウムと結合し
さらに細菌が働き結石を作る
*結石は大きいもので10cm近くなる

 ブログ元気元気--ナースによる心身の健康法の2009年5月13日のブログには、「コーヒーをブラックで飲むと腎臓結石ができますよ。」として、その理由を「看護学校の授業で、腎臓科の先生が、『コーヒーを飲むときは、必ずミルクを入れて飲みなさいよ。ブラックで飲むと腎臓結石になるから』とおっしゃいました。」と述べている。考えようによっては、この看護師さん自身が腎臓科の先生のウソの被害者とも言えるが、鵜呑みに信じ込んだ結果を、看護師としてウェブで発信したのは大変な誤りだ。

 これまで述べたことから、これまたウソの情報であることは明らかだが、腎臓科の医師、看護師、漢方薬剤師という肩書きがあるためか、信じる人がいるから困る。読む側に正しい科学的判断が必要だ。

 

 体が冷える?

 『健康みみブログ』ではコーヒーを標的にしているようで、「コーヒーを飲むと体が冷える」とタイトルして、「ステーキを食べた後のコーヒーは◎ですが蕎麦を食べた後のコーヒーは×ですね。最近、蕎麦屋や寿司屋でコーヒーを出す店がありますが、これはやっぱ、邪道です。」とか、「コーヒーを飲むと便秘になる」として「コーヒー中のタンニンなどの成分がさらに便秘悪化させてしまいます。」と述べている。コーヒーの利尿作用によって、体内の水分が少なくなるから、その分便が硬くなるという理論だ。人間の体は試験管ではない。それにもかかわらず血管や細胞の中の水分と、消化器官内の水分を同一視するなど、生理学以前の誤解や偏見に満ちている。コーヒーにタンニンは含まれていないばかりか、大腸ぜん動運動の亢進作用、つまり緩下作用があることが実証されている。国際中医薬膳師の Yakuzen Weblog の2006年5月の項によると、日本中医食養学会編の「食物性味表」に、コーヒーや紅茶は温性と記述されているそうだ。読者は、どちらを信じるだろうか?

 「水を2リットル飲む事と、コーヒーを10杯以上飲むことは、同じではありません。問題のすり替えです」とも述べていいるが、この漢方薬剤師の論調そのものが問題のすり替えである。私は蕎麦打ちを道楽の一つにしていてしばしば打つが、食後のコーヒーも欠かしたことがない。私としては日常的なことで、特に冷え性でもなければ、便秘症でもない。漢方薬剤師の目からすると邪道だそうだが、邪道と断言するからには、その語義と科学的根拠を明示すべきである。漢方薬剤師の邪道とはどういう意味なのだろうか。根拠も無しに邪道呼ばわりすることこそ、邪な行為ではないだろうか?「我が強く、屁理屈を並べて主張する人は結果が出ませんね。」と結論しているが、それこそ漢方薬剤師さん、あなた自身の姿である。

 コーヒーを飲むと云々という根拠は、どうやら二千年前の中国の「茶経」に茶の効用が述べられているにもかかわらず、コーヒーの記述が無いことにあるようだ。「確かに、コーヒー・紅茶・お茶にはカフェインが含まれてますが、それだけで同一視はできません。お茶は、2000年前の中国では『茶経』という経典があってお茶の効能として消食・清熱・利水・解毒・清心の作用があって薬として使われてきました。」と述べている。コーヒーが古代中国では知られていなかったとしても、アラビア世界では最初は薬として扱われていたし、今日では科学的に薬効成分が認められている。古代中国に知られていなかったコーヒーは、漢方薬剤師には受け入れられないのだろうか。古代中国には存在しなかった全てが邪道ということになり、16世紀に伝えられ、中華料理には欠かせなくなった唐辛子も×ということになるだろう。それともコーヒーは洋食には良いが、和食には不可だというのだろうか。どちらにしても全く非科学的で、根拠の無い屁理屈である。

 カフェイン類はコーヒーよりもお茶に多く含まれるが、カフェインという名称がコーヒーに由来するため、コーヒーが俎上に上る傾向がある。全日本コーヒー協会のホームページによれば、飲料としての状態で、コーヒーのカフェイン含有量は約0.06パーセントで、比較すれば、玉露の約0.16パーセント、紅茶約0.03パーセントなどで、特に多いとは言えない。我が家では、夜テレビを観ながら一杯の熱いコーヒーを楽しむことがあるが、眠りには全く不安がない。もしコーヒーのせいで眠れないとすれば、先入観による自己暗示のせいか、利尿作用によるためであろうと考えられる。

 

 コーヒーにはタンニン?

 コーヒーにはクロロゲン酸類という非常に強力な抗酸化作用を有するポリフェノールが、それも4%から10%と大量に含まれている。生豆を焙煎すると約20パーセント減少するので、1杯のコーヒーに使われるコーヒー生豆を12グラムとすると、ポリフェノールが平均840ミリグラム含まれている計算だ。赤ワイン150ミリリットルに300ミリグラムと言われているから、半分が抽出されるとしても420ミリグラムでワインを超える。クロロゲン酸類はかつてタンニンの一種と考えられてた時代もあったが、分子構造が確認されてからは薬効成分としても、香味成分としても、大きな役割を持っていることが認められている。

 クロロゲン酸は熱によって、次第にカフェー酸とキナ酸に変化するが、どちらもクロロゲン酸類として体内の活性酸素の除去に大きな力を発揮する優れた成分だ。にも拘らず、コーヒーのリーダー的なプロである田口護氏は、NHK出版の『コーヒー大全』に「抽出したくない成分の代表格はタンニンだ。タンニンは正確にはクロロゲン酸と呼ばれ、コーヒーの生豆には8〜9%、煎り豆には4〜5%含まれている」と述べている。この著書には他にもタンニンの抽出を防ぐ方法として、「コーヒー豆を粗めに挽き、やや分量を多くして、比較的低い温度(82〜83℃)でゆっくり抽出してやること」と指導している。氏の言う「タンニン」すなわちクロロゲン酸は、非常に水に融け易く、この方法では通常以上に多く抽出されてしまう。

 あるサイトで、浅煎りのスマトラ・マンデリンがダイエットに良いというテレビ番組に反論を加えているが、論旨が支離滅裂だ。それでもその記事に有り難うというレスポンスがあるぐらいだから、コーヒー有害論などの記事に対して根拠をもって反論しても、理解してもらえないかもしれない。スマトラ・マンデリンは粒の不揃いが多くあり、そのうえ水洗後の処理が不適切なものが多いらしく、発酵臭のするものが多々ある。この匂いを消すには、丁寧に水洗いした後、シティー・ロースト以上に焙煎するのが有効だが、浅煎りではこれを克服できない。その上、せっかくのスマトラ・マンデリンの香味を出し切れないという弱点がある。テレビのダイエット番組がもとで、店頭から納豆が消えたり、バナナが無くなったり、ローズヒップが売り切れたりしたが、マスコミは自らの影響力の大きさを考えて、無責任な情報を垂れ流さないようにすべきだ。

 

 藤岡弘氏のコーヒー道

 藤岡弘という、武道家とも自称する俳優が、「珈琲道」と銘打って、テレビで美味しいコーヒーの入れ方を伝授していた。何箇条かにわたるレシピ的巻物を示して、コーヒーの最高のいれ方と称するものを「珈琲道」として公開したものだ。その様子の後半はYoutubeの『藤岡弘の珈琲』でご覧いただける。一般に見落とされがちな、粗走りを捨てることを強調するなど、必ずしも噴飯ものとして笑うわけにいかない点もあるが、香味成分の蒸発や、ポリフェノールの酸化を促し、アロマを飛散させ、抽出した液体を泡立てることでさらに酸化を進めるという誤りを犯している。そうとう不味いはずだが、テレビでは誰も口に合わないとか、不味いとは言わなかった。不思議な世界だ。

 最初に抽出した液体を私は粗走りと呼んでいるが、これを捨てる点は、私と同じだ。がしかし、抽出に際して、湯を静かに注ぐのではなく、水滴状にして打ち付けるようにしながら10分もかけて抽出するというに至っては、空気との接触面積と接触時間を何倍にも増加させるものであって、アロマを散逸させ、抽出したコーヒーの酸化を早め、雑味を発生させるという品質劣化のための努力だ。湯の温度については触れていなかったが、仮に沸騰した熱湯からはじめたとしても、10分後にはかなり冷めているだろう。

 「○○道」というものは、必要以上に精神性を強調して形式に流れ、本来あるべき本質を失っている場合が多々見受けられる。藤岡弘の珈琲道も同じ轍を踏んだもので、コーヒーの香りと味ででくつろぎ、香味豊がなコーヒーで客をもてなすという本質を忘れている。

 彼の提唱する「珈琲道」は、有名人の片手間の馬鹿げたパフォーマンスに過ぎないが、有名人であるが故に一般への影響が大きく、信奉者が絶えないらしいのが残念である。嗜好品だから、彼が自分の味を追求することは彼自身にのみ意味のあることだが、あたかもそれが絶対であるかのように「珈琲道」と称するに至っては、やはり笑うべき愚挙である。あげくに彼のブランドのフルシティー・ローストかフレンチ・ローストらしいコーヒー豆を通信販売するに至っては、コーヒー初心者をコケにした行為であり、たいへん腹立たしい。

 以上で私は、特定の個人の発言ややり方に反論したり、批判を加えたが、誹謗中傷をしているのではない。それぞれが公表した説に対して、根拠をもって反論しているに過ぎないが、万一相手の方々が、公開の場で私に反論を加えるなら、喜んで受けて立つ。メールなどの非公開の場でなら無視する。もし私の説に誤りがあれば、潔く訂正するに吝かでない。このような誤解やウソに惑わされることなく、一人でも多くの方にコーヒーの真の素晴らしさを知って欲しい。




 

黒猫シャノワール :
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開設:2001.4.8
更新:2001.7.2
移転:2002.12.21
全面書き換え:2011.11.19